
Disk1
Disk2
高密度で明晰なのに踊りたくなるほど軽やかな7番と8番が最高
ヴァントについては以前ブルックナーのCDを1枚買った程度だし、クラシックの名演・名盤を比較して語れるほどの聴取経験もないのですが、このCDは最高です。
特に1枚目、交響曲第7番と第8番は、聴いているとウキウキしてくるような楽しさに溢れています。クラシックの批評ではあまり言われないことですが、特にリズム感が優れていると思います。付属の解説書のヴァント本人へのインタビューで、第2次大戦後、進駐軍相手に流行歌のアレンジやジャズのようなことをやっていたことがあると語っており、へぇー、なるほどと納得した次第です。ジャケットの、いかにもドイツの芸術家然としたいかめしい写真にだまされてはいけません(笑)。
それでいて、演奏はキメが細かく明晰で、楽譜を深く丁寧に読み込んでいる様子が伺えます。もう1枚のCD、交響曲第9番も、この曲の演奏にありがちなもったいぶった重々しさはありませんが、十分な聴き応えをそなえた名演といえるでしょう。
もっと評価されて然るべき
ヴァントといえばブルックナーだが、ベートホーフェンも素晴らしいと思う。否、ベートホーフェンの方が明らかに素晴らしい演奏だと思います。C.クライバーの爽快感のある演奏やカラヤンの華やかな演奏も良いですが、ヴァントの明快で重厚な演奏も一番作曲家の意図を反映していて良いのではないでしょうか。特に第九番は管弦楽、合唱共々素晴らしい。フルトヴェングラーのバイロイトでの歴史的名演よりこっちの方が個人的には好きです。
バイロイト9番の指南書
フルトヴェングラーのアンチテーゼでそう書いているのではない…むしろ賛辞である。つまり、こういうことだ。
バイロイト9番で別の方が書いておられたが、ヴァントの9番は、この曲の全てがわかる。
少なくともオーケストラの出している音の全てが、わかる。そして、フルトヴェングラーが揺さぶるテンポが、どこをどう揺さぶっているのかを、ヴァントはその稀有な“正しいテンポの射当て方”で浮き彫りにする。
バイロイト9番を良いと思えない方は、この演奏を聴いて欲しい。この巨大な曲にして、一歩も譲らないヴァントの明晰かつ完璧な9番のスケルトンが、他の指揮者の力量を丸映しにする。結論を言えば、この演奏を表現の執念で超えているのがバイロイトだけであることを知るはずだ。ただ…残念なことに、このヴァント9番は独唱がイマイチである。でも減点は全く無用だ。オーケストラは数多の指揮者の追随を許さない完璧なものである。
さらに残念なのは…逆説的だが、7番と8番も最高の演奏だということである。特に8番は同曲でベストワンになるべき演奏。7番もベストスリーに入る。クライバーのライブを入れてもだ。
この2枚組を1枚づつ1,000円台で分売すれば、絶対に評価が高まったはずなのに…。
ヴァントといえばブルックナーだが
最晩年のブルックナーの録音が評価の高いヴァントですが、ベートーヴェンも決して悪くありません。神扱いのフルトヴェングラー、その録音状態の悪い第九を聴くくらいだったら、ぜひ録音状態の非常にいいヴァントを聴いてほしいと思います。2CD、第七第八と第九でこの値段というのも良心的だと思います。