
きびきびと精力的で、情に流されない。幾分早めのテンポできりりと引き締まった辛口な演奏。それでいて粗いところはいささかもない。隙なく丁寧に設計され、バランスの良い、フォルムのきっちり整った演奏である。ちょっと聴いただけでは、そっけなく誇張もないが、よく聴くならば、安心して音楽に身を任せられるし、繰り返し聴くほどに味わいが深まる。特に弦楽セクションの立体的なアンサンブル、切れ味はさすが老舗ゲヴァントハウスの味。ドイツの正統派ピアニストと最古のオーケストラとの組み合わせといっても古臭い印象は皆無で、むしろ清新で鮮やかな音楽となっている。
第1番はパリッと歯切れ良いリズム感。曲のフォルムをしっかりと守りつつ、堅牢な音楽を構築している。第3番はじわり抑制した表情の中にあふれんばかりの情念を秘めている。ペダリングは控えめ。この引き締まり感がもっとも成功しているのは、第2番とヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版。第1楽章のベートーヴェン自身によるティンパニが加わったカデンツァはすさまじい迫力で、ベートーヴェン好きなら、一度は聴いておかなくてはならないほど斬新で眼を見張るようなシロモノである。第2楽章から第3楽章のブリッジに設けられたカデンツァもまったく耳新しいものだし、第3楽章のカデンツァも再びティンパニが登場する。安定した演奏と斬新な発見の両方を兼ね備えた名盤と言えるだろう。(林田直樹)
Disk1
Disk2
Disk3
ドイツ音楽の真髄〜オピッツのベートーヴェン:ピアノ協奏曲
オピッツのこだわりようは凄いものがある。それは、なかなか知られていないベートーヴェン自身が編曲したOp.61のあの名曲ヴァイオリン協奏曲の編曲版の収録である。さすがに、この曲はヴァイオリンだろうと思って聴いてみると、ピアノ協奏曲として見事に成立しているから驚きである。それ以外にもオピッツによる推進力溢れる5曲の傑作たちは素晴らしい。全体的にテンポ設定は早めで、これはベートーヴェンが意図していたものに近いように思う。それでいて、粗い印象はなくむしろ洗練された語り口で曲を進めて行くところに関心させられる。ピアニズムの確かさは言うまでもないが、音色の美しさなど筆舌に尽くしがたい。輸入版で3枚セットとして発売されているほかに日本語版もあるようである。まさにベートーヴェンの核心、真髄を見事に味わわせてくれる名盤である。
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